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[SMH-CD] V.A. / That's What I Call Sweet Music

約一ヶ月半ぶり、久々の「私的名盤アワー」です。しかし不定期連載ってのは気楽でいいですね〜。

Sweetmusic


さて第6回目はオールド・ジャズ。本作の正式タイトルは"From R.Crumb's 78RPM Record Collection - That's What I Call Sweet Music - American Dance Orchestras of the 1920s"。「ロバート・クラムのSP盤コレクションお蔵出し〜1920年代のアメリカン・ダンス楽団集」てな感じだろうか。本日(8/30)めでたく66歳の誕生日を迎えたクラムへのお祝いも兼ね、今回は彼が編纂したコンピ盤をオススメします(最近だと、熱帯の女性歌手ばかりを集めた"Hot Women"がようやく日本盤でも出た)。

ロバート・クラムと言えば、漫画家/イラストレーターとして有名なだけでなく、CHEAP SUIT SERENADERSやLES PRIMITIFS DU FUTURといった音楽活動、ブルースをはじめとした数々の復刻盤ジャケット等で好き者には今さら説明不要の人だろう。そして映画「ゴーストワールド」に出てくる冴えない中年コレクターのモデルとなったように(スティーヴ・ブシェミがハマリ役!)、世界に名だたるSP盤コレクターでもある。



本盤はそのクラムが選曲しただけあって、ほとんど名前を聞いたことのない楽団ばかりが収録されている(僕が知ってるのはEarl HinesとRed Nicholsくらい)。でもこれがみんなまろやかで、ホントにいい。何度聴いてもまったく飽きがこない。7,8年前に購入した時、どれだけマニアックな音が飛び出してくるのかと構えて聴いたら、素直に楽しい音ばかりが流れてきて拍子抜けしたほど。まさにタイトルに偽りなし、Sweet Musicがギッシリとつまった好盤。

20年代と言えば、大恐慌前のジャズ・エイジ。コットン・クラブ、禁酒法、マフィアなどがすぐ浮かんでくるように享楽的な都市文化が花開いた時代。よって本盤に収録されてるのも、ダンサブルでポップ、スウィンギーでウキウキする音ばかり。また収録曲の半分以上がヴォーカル入りで、その素朴な味わいが何ともたまらない。

これはもちろんSP盤起こしなんだろうけど、ノイズもほとんどなく、驚くほど音がいい。こういうのを聴いてると、とても豊かな気分になる(音自体もまろやかだし)。購入当時は、80年前の音を聴いてこんなに楽しめると思わなかったくらい(クラムのイラストを満載した手書きライナーを眺めてるだけでも楽しいし)。ホント、マニアに独占させておくのはもったいない逸品です。



と、オススメしたのはいいものの、どうやら現在入手困難らしく……(10年前に発売されたCDなのに)。ちなみにAmazonではえらい高額になってます(汗)。内容は文句なしに素晴らしいので、もし中古で安く見かけたら、ぜひお買い求めくださいませ。

以上、皆さまの音楽生活の参考になれば幸いです。では、また。


[CD] ジョー・ヘンリーがまた傑作をリリース

今日は何だか蒸し暑かったです(昼ごろ関西は雨模様でしたし)。台風の影響でしょうかね。

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JOE HENRY/Blood From Stars

以前こちらで書いたように、ジョー・ヘンリー待望の新譜が先日リリースされた。公式サイトのディスコグラフィーによると、通算11枚目のアルバム。そしてこれが予想通りの傑作。

短期間で一気に録音してしまうという彼のレコーディングの特徴(本作は5日間)も影響しているのだろうか、非常に統一感と緊張感のあるアルバム。グイグイくるただならぬ迫力に思わず唸ってしまった。バンドはいつもの固定メンバーに加え、マーク・リボー(本職のギター以外に何とコルネットも)、JHの息子リヴォン(サックスとクラリネット。まだ17歳だけど、なかなかいい味出してる)などが参加。



ブルース/ジャズ/カントリー/フォーク/ソウル/ロック、それらの絶妙なブレンド具合が彼の大きな魅力であり(宣伝文句にはブルース・アルバムだとえらく強調してあるが、ちょっとズレてる気がする…)、素晴らしいSSWだということのほか、その点においてもボブ・ディランやランディ・ニューマンと共通項があるような気がする。ロックだけではないアメリカン・ポピュラー音楽を包含した音、とでも言えるだろうか(僕にとってはスフィアン・スティーヴンスやルーファス・ウェインライトもそれに近い感覚)。

ところで、先日JHの2ndアルバム"Murder Of Crows"('89年)を中古で入手したのだが(過去作は廃盤が多いため再発を希望します)、パッと聴きの印象が近作とかなり違うことにビックリした。こちらはザ・バンドやヴァン・モリソンが透けて見えるような音で、僕が彼を意識するようになった"Scar"('01年)以降の作品と比べるとまだ独自色が出ていない印象を受けた。彼独特の話法も一日にして成らず。当たり前だけど、色んな変遷を経てきてるんだなと。

とは言え、ザ・バンド自体が「アメリカン・ポピュラー音楽を包含した音」だし、やはり根っこの部分は変わってないんだと思う。'07年に出たザ・バンドのトリビュート盤"Endless Highway"において、とりわけ好きだったのが彼の"Bessie Smith"で(日本盤ボーナスディスクのみに収録)、これはオーソドックスでありながら近作ともつながる素晴らしいカバーだった。今から思えば、初期作と近作とを結ぶ立ち位置にある曲だったんだと膝を打った次第(余談だけど、息子にリヴォンって付けたのはザ・バンド好きが高じた結果?)。



さてJHと言えば、ジャケットのチョイスにいつも驚かされる。ちなみに下記は前作"Civilians"('07年)、前々作"Tiny Voices"('03年)のジャケ(これらも傑作なので、未聴の方はぜひ)。新作も非常に印象的なジャケで(ユージン・スミスによるもの。同様にブックレットのカバー写真も秀逸)、映像的な音とあわせて一貫した美意識が感じられる。また彼のアルバムを聴き終えた時に受ける感じは、ずっしりと味わい深い映画や文学を堪能したあと受ける感じにとても似てることを付け加えておく。

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ミュージックマガジン最新号(9月号)のインタビューによると、これからモーズ・アリソンやハリー・ベラフォンテ(ともに82歳!)をプロデュースするという彼。ベテランシンガーたちにまた新しい力を与えてくれそうでとても楽しみだ(何だか野村再生工場みたい?)。

最後に。最近知ったんだけど、彼の奥さんは何とあのマドンナの妹(メラニー・チコネ Melanie Ciccone)だそうな。その縁で義理の姉さんとデュエットや共作もしているようだ(僕は未聴)。ちょっと面白いつながりだと思いません?実現可能性は低いと思うけど、彼がマドンナのアルバムをフルプロデュースしたらどんなものが出来るんだろうとか想像したり(昔のジャズ風とかハマりそうだけど)。そう言えば、もうすぐマドンナのオールタイムベスト盤が出ますね。"Borderline"は私的ベストソング上位に入るくらい好きなんだよなー。

少しとりとめなくなりましたが。以上、皆さまの音楽生活の参考になれば幸いです。では、また。

ジム・ディッキンソン、逝去

http://www.bounce.com/news/daily.php/20470

また訃報です…。JIM DICKINSONことJAMES LUTHER DICKINSONが亡くなりました(死因は不明)。享年67歳。しかし今年に入って、いいミュージシャンがどんどんいなくなっていく気がして寂しい限りです(タイミングを逃し取り上げてませんでしたが、ケニー・ランキンの訃報は本当に残念でした)。

彼はどちらかと言うと裏方仕事で有名な通好みのミュージシャンでした。このブログをご覧の方々の一部(多く?)には今更不要かもしれませんが、ごく簡単に説明しますと。ディキシー・フライヤーズのキーボーディストとしてアレサ・フランクリンやデラニー&ボニー、リタ・クーリッジらをバックアップしたり、ローリング・ストーンズ"Wild Horses"(名盤"Sticky Fingers"に収録)でピアノを弾いていたり、かねてからのファンだったボブ・ディラン"Time Out Of Mind"へ参加したり、といったところが有名でしょうか。

Jimdickinson

裏方ばかりではなくソロ作も出してますが、"Dixie Fried"(上掲ジャケ)はスワンプ・ロックンロールの名盤として名高いです。日本ではワーナーの「名盤探検隊」で10年ほど前に再発され、愛聴されてる方も多いと思います。

また個人的には、ライ・クーダーの初期名作"Into The Purple Valley"(2nd)や"Boomer's Story"(3rd)をレニー・ワロンカーと共同でプロデュースしていたのも忘れられません(他にリプレイスメンツやアレックス・チルトンもプロデュースしていたのは今回初めて知りました)。

彼の関連作を聴いて追悼したいと思います。謹んでご冥福をお祈りします。


レス・ポール、逝去

http://www.barks.jp/news/?id=1000051982

ギタリストのレス・ポールが肺炎で亡くなりました。享年94歳。ご承知の通り、ギブソン・レスポール(エレキ・ギター)の生みの親であり、多重録音など技術的な面でも大きな功績を残した人でした。

Chesterlester

御年90を過ぎてもまだ現役で演奏している(週一のペース)というのを聞き、いつか機会があれば生で見てみたいとも思っていたんですが…。

今はチェット・アトキンスとの共演盤"Chester And Lester"(上掲ジャケ)を聴いて追悼しています。また、映画「レス・ポールの伝説」は未見につき、近いうちレンタルしてみようと思っています。

謹んでご冥福をお祈りします。

http://www.lespaulonline.com/

[CD] 60s groove

まだレナード・コーエンを見終えてないんで、先にCDのオススメを。今回は前回の爺さん世代よりもう少し若いモッズ世代(と言っても60歳以上ですが)をご紹介。

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GEORGIE FAME & THE LAST BLUE FLAMES/Tone-Wheels 'A' Turnin'

ジョージー・フェイム、御年66歳。過度な期待を抱かずこの新譜を購入したんだけど(失礼)、これがホントに素晴らしい。今までの彼の集大成とも言えるオリジナル曲集で、そのクオリティの高さに正直ビックリした。カバーは一切なしというのが彼のイメージとちょっと違うこともあり、いい意味で予想を裏切られた。

音的にはR&B、ソウル、ブルース、ジャズ、ボサノヴァ、ラテン、ラウンジといったあたり(この辺はいつもと同じ)。フェイムのオルガン('66年から愛用のハモンドA100)とヴォーカルが相変わらず小粋でいいし、バンドとしての一体感もある。特にテナーサックス、トランペットの2管(テナーはアラン・スキドモア)とヴィブラフォンが大活躍していて、このメンバーでのライヴが観たくなる。

全12曲捨て曲なしだけど、僕のお気に入りをいくつか挙げると。M-2は小粋にステップ踏みたくなるジャンプ&ジャイヴ。Blow Your Horn!と叫びたくなるスウィンギーなナンバー。ウーシュビドゥビ。M-5は南国気分満点のカリプソ。パーカッションとトランペットが心地よい風を運んでくるよう。M-9はニューオリンズのリズム+グルーヴィーなオルガン。60年代のフェイムそのままって感じ。

グルーヴィーでヒップでメロウな本盤は、長い彼のキャリアのなかでも代表作の一枚に挙げられるだろう傑作。当然これも年間ベストテン1位候補です。過去に彼の音楽を聴いて一度でもいいと思ったことのある人、また前述のジャンルにピンと来た方はぜひに。必ず気に入ってもらえると思います。

ただ残念なことに、この6月に発売されたばかりなのに、既に輸入盤は入手困難な様子(なぜ?)。色んな人に聴いてもらいたいので、日本盤の発売を切に望みます。心あるレコード会社の方、ご検討よろしくお願いします。

以上、皆さまの音楽生活の参考になれば幸いです。では、また。

[CD] 爺さん世代の好盤2枚

ここ数年、特にベテラン勢の元気がいいと感じることが多くなったけど、最近もオヤジというよりは爺さんたち(70歳以上!)が素晴らしい作品を出している。それらは高齢の割に素晴らしいということではなく、もちろん年輪を重ねたからこそ染み出てくる味や豊かさに満ちている作品たちだ。

今回オススメするのは、奇しくもジョー・ヘンリー(傑作"Civilians"以来、2年ぶりのソロ・アルバムとなる"Blood From Stars"が今月リリースされるので楽しみ!)がプロデュースしたもの。タイミングを逃して今まで紹介できずにいたが、2作とも本当に素晴らしい。



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・ALLEN TOUSSAINT/The Bright Mississippi
・RAMBLIN' JACK ELLIOTT/A Stranger Here

まずは御年71歳のアラン・トゥーサンから。コステロとの共演盤"The River In Reverse"('06年)に続いてリリースされたのは、意表をつくオールド・ジャズのカバー集。ニューオリンズとジャズは切っても切れない関係にあるが、彼の地の重鎮トゥーサンと結びつけるのは不思議と違和感があるように思えた(やはりR&B以降のイメージが強すぎるためか)。それもあって最初聴いた時はファンキーさに欠けて物足りないなぁと思ってたんだけど、これが聴くたびに良くなってくるスルメ盤だった。

シドニー・ベシェに始まり、ジェリー・ロール・モートン、キング・オリヴァー、ジャンゴ・ラインハルト、セロニアス・モンク、デューク・エリントンなど、まさにジャズの古典を気品溢れる演奏で21世紀に蘇らせている。そしてドン・バイロン、マーク・リボー、ブラッド・メルドー、ジョシュア・レッドマンら豪華布陣(そして曲者揃い)が脇を固めるなか、主役であるトゥーサンのピアノの響きが端正でとても美しい。どの曲も素晴らしいが、とりわけM-12"Solitude"はそのシンプルさゆえに、何度聴いてもグッとくる。

聴き終えると無性にオールド・ジャズとニューオリンズ音楽の両方を聴きたくなり、かつ過去と現在、そして未来がつながるような感じがしてくるアルバム。なお雰囲気あるジャケットはウィリアム・クラクストン(ジャズ・ミュージシャンを撮った数々の写真で名高い)によるもの('60年作品)。



次は御年78歳のランブリン・ジャック・エリオット。かつてウディ・ガスリーとともにアメリカ国内を放浪し、ディランに「俺はジャック・エリオットの息子だ」と言わしめる超ベテラン・フォーク・シンガー。ジョー・ヘンリーとはディランの伝記映画『アイム・ノット・ゼア』関連で出会ったらしいが、その出会いがこの大恐慌時代のブルースをカバーする企画につながった。

ブラインド・レモン・ジェファーソンに始まり、ブラインド・ウィリー・ジョンソン、ミシシッピ・ジョン・ハート、サン・ハウス、タンパ・レッド、リロイ・カーなど、まさに戦前ブルースを代表するブルースマンの曲を滋味溢れる歌と演奏でカバーしている好盤。ヴァン・ダイク・パークス、デヴィッド・ヒダルゴ(fromロス・ロボス。ディランの新譜にも参加)などのゲストミュージシャンも非常にいい仕事をしている。

ブックレットには総白髪のジャック・エリオットが写っているが、とても「しゃんとしている」感じに見える。彼のその佇まいがこのアルバムに確固たる骨格を与えているように思う。なお印象的なジャケットはユージン・スミス(水俣病の写真などで日本とも縁が深い)によるもの("Stranger In Town"・'42年作品)。



この2枚については、ミュージックマガジンで高橋健太郎さんや宮子和眞さんがジョー・ヘンリーに絡めて書かれていたので、記事を読まれた方も多いと思う。企画(プロデュース)やミュージシャンの素晴らしさはもちろんだが、やはり歌/楽曲の持つシンプルな力強さを引き出しているところがスゴイなぁと。そして先達が遺してくれた音楽遺産を引き継いでいくんだという気概を感じる。ジョー・ヘンリー、ホント恐るべし、ですよ。


実はあとレナード・コーエンのライヴDVD"Live In London"もレビューしようと思ったんですが(同内容のCDは未購入)、まだ途中につき今回は見送り。見終わったらレビューする予定ですが、はっきり言って、これはスゴイです。いきなり年間ベストテンの1位候補に。未見の方はぜひ!

以上、皆さまの音楽生活の参考になれば幸いです。では、また。