郷ひろみのどす黒グルーヴ盤 <再発CD化希望>
May 26, 2013
こんばんは。このところ毎日暑いですね。気温だけだと、初夏を通り越してもう夏…。爽やかな季節はいずこに?
さて、久々に郷ひろみのアルバムレビューを。「ヒロミックの魅力を広めるべく、微力ながら今後不定期にアルバムなど紹介していく予定です」と書いた前回レビューから何と1年4ヶ月ぶり(間が空いてスイマセン!)。今回紹介するこのアルバム、実は結構暑苦しいんですが、まぁ夏先取りってことで。では、よろしくどうぞ。
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■郷ひろみ/ナルシリズム('78/7/21発売)
アルバムの英語表記は「Narci-rhythm」で、まさに陶酔のリズム&グルーヴが刻まれている好盤。数年前開催した国境の南イベントで、Iくんにオススメされその後LPを購入。イベントではA面1曲目「ZONE・亜熱帯」(YouTubeリンクはこちら)を聴かせてもらったけど、これがタイトル通りのトロピカル・フュージョン歌謡でとても良かった。リゾート感あるゆったりグルーヴがタマリません。
以下、お気に入りのA面を中心にレビュー。特にA-2〜4の黒さは尋常じゃなく、あまり話題にならないのが不思議なくらい。A-2「METAL POINT」はその超絶なカッコ良さに悶絶。何なんだ、このどす黒いグルーヴは!後藤次利のファンク・ベースが恐ろしいほどカッコ良い。間奏のホーン、キーボード・ソロなど聴きどころ満載でシビレまくり。名作「プラスティック・ゼネレーション」で流行りのダンスビートを昇華していたヒロミックだけど、それに先立つこと約3年、これはクールなファンクネスという意味でアイドル歌謡史上トップクラスなのでは?と、ひとり興奮。
続いてのA-3「HELL OR HEAVEN(地獄か天国)」も必要以上に黒い(リンクはこちら)。ビブラフォンが夜の空気を妖しく描き出すロイ・エアーズ歌謡。勝手ながら夜ジャズ・コンピ候補曲に推薦したい。そして続くA-4「SIDE ONE SIDE」に至っては、どう聴いたってジャズファンクそのもの(リンクはこちら)。サンプリング必至の漆黒ビート、その性急なファンクネスに失神寸前!これはマジでヤバイでしょ。キーボード・ソロも聴き物だし(クレジットにはKey B:羽田健太郎・穂口雄右と両名記載)、この辺はぜひアナログを大音量で聴いてもらいたいところ。
そしてA面ラスト、ストリングスが印象的なフィリー・グルーヴ「HIGHWAY TROUBLE」へとなだれ込む。'75年の名盤「Hiromic World」に収録されている「恋のハイウェイ」(リンクはこちら)の続編的ナンバー。この疾走感、何度聴いてもカッコ良すぎ(サウンド的にはアルバムでいちばんDJ向きかも)。もちろん、これらの黒いサウンドとがっぷり四つに組んでいるヒロミックの歌唱が素晴らしいことは言うまでもない。
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A面でお腹いっぱいになってしまうけど(笑)、続いてB面を。こちらはA面と打って変わり、しっとりメロウな曲が並ぶ。成長したヒロミックの歌がじっくり聴けるこの面も魅力的で、例えばB-2「FLASH」(リンクはこちら)、B-3「ホルス伝説」(リンクはこちら)を聴いてもらえれば納得がいくはず。で、僕のB面イチオシはしっとりした味わいのB-4「奇しくも はかなくも おかしくも悲しい物語」。阿木燿子による歌詞が甘酸っぱくてとてもいい。紫陽花の咲く季節、勤める工場の休日に、幼なじみの女性と再会するんだけど、、。切なくも情感こもった歌にホロリとくる逸品。
そしてオーラスはガラリとムードを変え、大ヒットシングルで締め。TBS系ドラマ「ムー一族」の挿入歌(A-3も同様)、樹木希林とのデュエットと言えば、ご存じ「林檎殺人事件」('78/6/21発売。YouTubeリンクはこちら)。何度聴いても、この軽さ、お遊び感覚がタマりません(阿久悠のとぼけた歌詞がまた最高)。サウンド的にはアルバム中で最もハッスル直系のディスコ歌謡。スタジオ音源もいいけど、二人のコミカルな踊りが楽しめるこちら(夜ヒット)や、こちら(ドラマ内?)、こちら(フジ系歌謡祭?)が断然オススメ(不思議なことに何度見ても飽きないんだなぁ)。特に最後のは「ムー一族」収録現場からの中継らしく、豪華俳優陣も映って貴重かと。
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最後はスタッフに触れておこう。全曲の作曲・編曲を穂口雄右(キャンディーズ「春一番」「微笑がえし」等で有名)が手掛けている。時期的にはキャンディーズ解散して間もなくの頃(本アルバム発売同年の4月4日にファイナルカーニバル開催)。これだけハイクオリティかつバラエティに富んだ作品を残されるとは、先生、ホント才気走ってます!35年経った今聴いても十分過ぎるほどカッコイイですよ!
作詞は島武実(5曲)、阿木燿子(4曲)、阿久悠(1曲)の3人で、それぞれ持ち味を発揮。演奏メンバーは、佐藤準、羽田健太郎、穂口雄右(key)、後藤次利(b)、Rovert Peter Brill、林立夫(dr)、水谷公生、松原正樹(g)、斉藤ノブ(latin)など、見ての通りの豪華陣。これで悪い音になるはずないよな。
拙文を読んで、一度聴いてみようと思われた方、おそらくCDは入手困難かと思われますので、ぜひ中古アナログ盤をご購入ください(たぶん安く入手できるかと思います)。
(おまけ)裏ジャケ。ハイウェストな白半パンがタマリません!
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本作のほか、郷ひろみには現在確認しているだけでも以下の良盤あり。これらはまた機会を改めてご紹介します(未聴盤もまだたくさんあり、これから鋭意発掘作業を進めていく所存です)。
・「ひろみの旅」('75/6/21)
・「Hiromic World」('75/11/21)
・「ナルシリズム」('78/7/21)(本レビュー)
・「Super Drive」('79/12/21)
・「Magic」('80/8/21)
・「プラスティック・ゼネレーション」('81/5/1)(こちらでレビュー済み)
・「アスファルト・ヒーロー」('81/12/21)
・「アリュージョン」('84/12/1)
それにつけても、これらヒロミックの傑作群がきちんとした形で再発CD化されないのは日本の歌謡界にとって大きな損失です。本当に由々しき事態かと。何度も声を大にして言いますが、リマスタリングCD再発(できれば紙ジャケ+ボーナストラック付きで)、ご検討のほど、何卒よろしくお願いします!
以上、皆さまの音楽生活の参考になれば幸いです。では、また。