秋のレビュー祭り(3) ブラジル発ファンキー・ブラバン
October 06, 2013
こんにちは。関西は10月にして真夏日となってますが(一体どうなってるんでしょうか?)、皆さまいかがお過ごしでしょうか。最近僕はすっかり「読書の秋」です。本屋に足を運んで色々物色するのが楽しくて仕方ありません。今までスルーすることの多かった理工系・建築関連にも面白い本を発見し、世界が拡がっていく感じですね。その分レコ屋に行く時間があまり取れてないんですが…。
さて引き続きワールドミュージック・レビューを。本盤も夏休みにエル・スールにてH店主にオススメされたCD。ズバリ好みの音で、すっかり愛聴盤になってます。ということで、よろしくどうぞ。
*
■ORQUESTRA VOADORA/Ferro Velho →オフィシャルサイト(こちら)で全曲試聴可
ブラジルの大所帯ブラスバンドのデビュー作(バンド名は「空飛ぶ楽団」という意味みたい)。これがもう、爆音で聴きたい快作!リオのカーニバルに出てたブラバン+パーカッション集団が母体になってる様子(クレジット記載の主要メンバーは15人)。肝になるのは全体をグイッと引っ張る低音担当のチューバ。これに太鼓隊が絡んで生き生きしたグルーヴを導き出している。とにかく管バス(=チューバ)ならではの弾むビート感が素晴らしい。
加えて、選曲の何でもあり感がタマリません(アルバム未収録ながら、何と日本のスペクトルマンまでやってます。アメコミ調の映像も最高!←YouTubeリンク参照のこと)。本アルバム全11曲の内訳はカバー7曲:オリジナル4曲。音楽的支柱と思われるチューバのTIM MALIKが主として書いているオリジナル曲もいい感じだけど、とりわけカバーに興味深い曲が多い。以下、カバー曲を列挙してみると。
(非ブラジル系・4曲)マヌ・ディバンゴ"African Battle"、フェラ・クティ"Expensive Shit"、スティーヴィー・ワンダー"Superstition(迷信)"、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン"Know Your Enemy"。
カメルーン、ナイジェリア、アメリカの有名どころが並ぶ。個人的には特にフェラ・クティとスティーヴィーのが盛り上がるが、レイジは意外なセレクトで少しメタリックな感触もあり唸った。ロックギターのリフは結構ブラバンに合うと思うんで、ぜひ色々トライしてもらいたい。
(ブラジル系・3曲)ロベルト・カルロス"Todos Estao Surdos"(カエターノとも縁深いブラジル歌謡界の帝王。間奏でジョルジ・ベン"Ponta De Lanca Africano(Umbabarauma)"のフレーズも挟み込まれる)、セコス&モリャードス"Amor"(鬼才ネイ・マトグロッソ率いるブラジリアン・サイケ〜グラム・ロック・バンドの1st収録曲。オリジナル盤は激レア)。ムタンチス"Top Top"(ブラジル好きにはお馴染みムタンチス4thより。ムタンチス/リミーニャ作のポップ曲)。こちらは結構渋好みの選曲だけど、ホントどれもいい。興味を持った方はぜひオリジナルもあわせて聴いてほしい。
♪
ただ音や言葉よりも、映像の方が彼らの魅力がダイレクトに伝わると思うんで、ぜひ以下の動画リンクを見てください!ホントに楽しいッスよ〜。
・これを見るといちばん魅力が伝わるかも。パリの街を練り歩き(監督:ヴィンセント・ムーン)。音もいい!
・これは盛り上がる!上述フェラのカバー。それにしてもこの人の多さ!
・これも最高!上述スティーヴィー「迷信」のカバー。
・これもカッコイイ。上述レイジのカバー。
・これはアルバム未収録。WARの"Low Rider"。いいッスねー。
♪
ブラスバンドと言えば、まずこのORQUESTRA VOADORAに直結する雰囲気を持つDIRTY DOZEN BRASS BANDなど、ニューオリンズ産のファンキーな楽団を思い出す。と同時に、'91年に発売された19〜21ユニバーサル・バンド「ブラスは世界を結ぶ」というブラスバンドのアルバムのことも。後者は20年以上経った今聴いてもふくよかで温かい、まろみのある音が素晴らしい傑作である。
このアルバムは19世紀後半まだジャズが生まれる前、世界中に散らばっていたブラスバンドの音(世界音楽)を現代の感覚で蘇らせた素晴らしい試みだった。故・中村とうよう氏、田中勝則氏、エンリッキ・カゼス氏らによる日本とブラジルの合同プロジェクトで、日本からはコンポステラが演奏に参加していた。今回紹介したORQUESTRA VOADORAがブラジル出身なのはもちろん偶然だが、その巡り合わせにちょっと驚いた。
20世紀に各地で花開いたポピュラー音楽の原型のひとつである19世紀型のブラスバンドが、1世紀飛び越えて世界で流行し、閉塞した21世紀の音楽シーンを活性化させたら面白いかも。もしかしたら、大友良英&「あまちゃん」スペシャルビッグバンドがその端緒かも?などと夢想したり。難しいことは抜きにして&話は戻って、このORQUESTRA VOADORA、ブラバン好き、ビッグバンド好きはもちろん、ニューオリンズ・ファンクやアフロビート好きにもオススメ!今いちばんライヴを見たい、というか、ぜひ楽団の後を一緒に練り歩きたい人たち!
*
思わず長文になりましたが、ホント、世界は広し。色んな面白い人たちがいます!まだまだ探求の旅は続きますが、次回また早めにお目にかかりましょう。
以上、皆さまの音楽生活の参考になれば幸いです。では、また。
さて引き続きワールドミュージック・レビューを。本盤も夏休みにエル・スールにてH店主にオススメされたCD。ズバリ好みの音で、すっかり愛聴盤になってます。ということで、よろしくどうぞ。
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■ORQUESTRA VOADORA/Ferro Velho →オフィシャルサイト(こちら)で全曲試聴可
ブラジルの大所帯ブラスバンドのデビュー作(バンド名は「空飛ぶ楽団」という意味みたい)。これがもう、爆音で聴きたい快作!リオのカーニバルに出てたブラバン+パーカッション集団が母体になってる様子(クレジット記載の主要メンバーは15人)。肝になるのは全体をグイッと引っ張る低音担当のチューバ。これに太鼓隊が絡んで生き生きしたグルーヴを導き出している。とにかく管バス(=チューバ)ならではの弾むビート感が素晴らしい。
加えて、選曲の何でもあり感がタマリません(アルバム未収録ながら、何と日本のスペクトルマンまでやってます。アメコミ調の映像も最高!←YouTubeリンク参照のこと)。本アルバム全11曲の内訳はカバー7曲:オリジナル4曲。音楽的支柱と思われるチューバのTIM MALIKが主として書いているオリジナル曲もいい感じだけど、とりわけカバーに興味深い曲が多い。以下、カバー曲を列挙してみると。
(非ブラジル系・4曲)マヌ・ディバンゴ"African Battle"、フェラ・クティ"Expensive Shit"、スティーヴィー・ワンダー"Superstition(迷信)"、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン"Know Your Enemy"。
カメルーン、ナイジェリア、アメリカの有名どころが並ぶ。個人的には特にフェラ・クティとスティーヴィーのが盛り上がるが、レイジは意外なセレクトで少しメタリックな感触もあり唸った。ロックギターのリフは結構ブラバンに合うと思うんで、ぜひ色々トライしてもらいたい。
(ブラジル系・3曲)ロベルト・カルロス"Todos Estao Surdos"(カエターノとも縁深いブラジル歌謡界の帝王。間奏でジョルジ・ベン"Ponta De Lanca Africano(Umbabarauma)"のフレーズも挟み込まれる)、セコス&モリャードス"Amor"(鬼才ネイ・マトグロッソ率いるブラジリアン・サイケ〜グラム・ロック・バンドの1st収録曲。オリジナル盤は激レア)。ムタンチス"Top Top"(ブラジル好きにはお馴染みムタンチス4thより。ムタンチス/リミーニャ作のポップ曲)。こちらは結構渋好みの選曲だけど、ホントどれもいい。興味を持った方はぜひオリジナルもあわせて聴いてほしい。
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ただ音や言葉よりも、映像の方が彼らの魅力がダイレクトに伝わると思うんで、ぜひ以下の動画リンクを見てください!ホントに楽しいッスよ〜。
・これを見るといちばん魅力が伝わるかも。パリの街を練り歩き(監督:ヴィンセント・ムーン)。音もいい!
・これは盛り上がる!上述フェラのカバー。それにしてもこの人の多さ!
・これも最高!上述スティーヴィー「迷信」のカバー。
・これもカッコイイ。上述レイジのカバー。
・これはアルバム未収録。WARの"Low Rider"。いいッスねー。
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ブラスバンドと言えば、まずこのORQUESTRA VOADORAに直結する雰囲気を持つDIRTY DOZEN BRASS BANDなど、ニューオリンズ産のファンキーな楽団を思い出す。と同時に、'91年に発売された19〜21ユニバーサル・バンド「ブラスは世界を結ぶ」というブラスバンドのアルバムのことも。後者は20年以上経った今聴いてもふくよかで温かい、まろみのある音が素晴らしい傑作である。
このアルバムは19世紀後半まだジャズが生まれる前、世界中に散らばっていたブラスバンドの音(世界音楽)を現代の感覚で蘇らせた素晴らしい試みだった。故・中村とうよう氏、田中勝則氏、エンリッキ・カゼス氏らによる日本とブラジルの合同プロジェクトで、日本からはコンポステラが演奏に参加していた。今回紹介したORQUESTRA VOADORAがブラジル出身なのはもちろん偶然だが、その巡り合わせにちょっと驚いた。
20世紀に各地で花開いたポピュラー音楽の原型のひとつである19世紀型のブラスバンドが、1世紀飛び越えて世界で流行し、閉塞した21世紀の音楽シーンを活性化させたら面白いかも。もしかしたら、大友良英&「あまちゃん」スペシャルビッグバンドがその端緒かも?などと夢想したり。難しいことは抜きにして&話は戻って、このORQUESTRA VOADORA、ブラバン好き、ビッグバンド好きはもちろん、ニューオリンズ・ファンクやアフロビート好きにもオススメ!今いちばんライヴを見たい、というか、ぜひ楽団の後を一緒に練り歩きたい人たち!
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思わず長文になりましたが、ホント、世界は広し。色んな面白い人たちがいます!まだまだ探求の旅は続きますが、次回また早めにお目にかかりましょう。
以上、皆さまの音楽生活の参考になれば幸いです。では、また。
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