春の盤まつり(2) チリの凜々しい女性ラッパー
April 06, 2014
こんにちは。今日は肌寒く、不安定な天気ですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。今年はタイミング合わず、僕は花見らしい花見はせずに終わりそうですが、今日で桜の花も散っちゃうんでしょうね。
さて桜吹雪の中、「春の盤まつり」は続きます。第2回目も南米で行きましょう。今回は注目すべき女性ラッパーfromチリをご紹介。世界はホント広いですね。よろしくどうぞ。
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■ANA TIJOUX/Vengo →音源試聴はこちらやこちらなど
チリ人女性ラッパー、アナ・ティジュの新作(4thアルバム)が素晴らしい。彼女の音楽は初めて聴いたけど、一発で気に入ってしまった。ピノチェト軍事独裁政権に抵抗する反体制活動家を両親に持ち、亡命先のフランスで生まれたのが彼女。ライナーによると「ヒップホップを選んだ」のは「世に伝えたいことを的確に言葉で表現」するためだという。女性の闘士を描いたイラストがブックレットにもあるが、まさに彼女自身が決意を持った闘士である(反体制、反グローバリズム、環境問題、少数民族問題、都市化弊害、、というキーワードが浮かんでくる)。
もちろん音楽性も豊かで、聴き飽きない。「私はやってきた」という意味のタイトルである本作は、ケーナの音に導かれるようにして始まる。フォルクローレ、ジャズ、ソウル、サントラなどを練り込んだバックトラックは、センスがあってカッコイイ。いい意味でオーソドックスなヒップホップである。曲間のスキットもいい具合だし。スペイン語のレベル・ミュージックということもあって、時折マヌ・チャオを思い出す瞬間も。個人的には今年のベストアルバム候補に。オススメ!
またM-2(リンクはこちら)ではパレスチナ系英国人の女性ラッパー、シャディア・マンスール SHADIA MANSOUR (彼女のカッコ良すぎるPVはこちら)が参加しており、同志的なつながりを感じさせる。世界とのつながりということで言えば、アルバムには未収録だが、反TPPソング"No Al TPP"も発表している(PVはこちら)。クラシカルなボサノヴァが胸を打つ。彼女のブレのない凜々しい姿に、感じるもの多し。
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■ANA TIJOUX/1977 (左・2nd・2009年)
■ANA TIJOUX/La Bala (右・3rd・2011年)
彼女のはぜひ遡ってアルバムを聴いてみたいと思い、上掲の過去作を早速購入(この2作ともグラミー賞にノミネートされた)。まだ新作ほど聴き込めてないが、さすがに内容充実しており、カッコイイ。後者には、僕の大好きなウルグアイのホルヘ・ドレクスレルも参加していた。
また「1977」のライナーによると、このアルバムはクラシック・ヒップホップへのオマージュが捧げられているようだ。特にNAS、Wu-Tang Clan、A Tribe Called Questらの名作がリリースされた'92〜'95年の黄金期(彼女がいちばん好きな時期)に対する思い入れが強く、それらのような飽きられないスタイルの作品を作りたいという確固たる意思がある模様。なるほど、確かにその辺の音作りを踏襲しているなと思ったし、今でも十分通用するカッコ良さとシンプルさがあると思う。また最近、僕自身、90年代前半の音を無性に聴きたくなることがあり、不思議とシンクロしていた。20年経って、90年代もそろそろ再評価の時期に来てるのかも。
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ということで、アナ姐さん、興味のある方はぜひ聴いてみてください。他にもオススメ盤があるんで、「春の盤まつり」はまだまだ続きます。
以上、皆さまの音楽生活の参考になれば幸いです。では、また。