Stop Look Listen(2025年6月号)

月刊誌的「Stop Look Listen」の第6回。何かと慌ただしい日々、気づけば今年ももう半分終わろうとしています。あっという間に過ぎ去る日々の何気ないことを書き留めようと思い立ち、「今月の日記」はじめました。よろしくどうぞ。

<目次>

①今月の音楽
②今月の読みかけ
③今月の日記
■編集後記 

①今月の音楽

エルスール閉店という衝撃的なニュースが流れたのは5月のこと。ワールドミュージック愛好家/関係者の間でかなりざわついたのですが、渋谷の現店舗を6/21に閉店し、移転先を探しているとのことでした。その後、江戸川橋地蔵通り商店街への移転が無事決まったとのことで(こちら)、ひとまず安心しました。秋口あたりに再開とのこと、機会を見てぜひ伺いたいと思っています。

閉店セール(30%オフ)ではラテンの中古アナログ盤を中心に色々購入しました。セール対象外の新着CDも購入しましたが、こちらを愛聴しています。やっぱり僕はラテン音楽が好きだなーと再認識しました。



Juana Luna, Eleni / La Paloma


Juana Luna / Olmedo

アルゼンチン出身で現在はNYに拠点をおくSSW、Juana Lunaのアルバム"Canciones en Blanco y Negro"(白と黒の歌)がとてもいい。温かく柔らかで上品な佇まいのフォーキー/トラッド。感傷的で哀愁漂う曲や優しく包み込む子守歌のような曲が多くを占めるが、シンセやサンプリングを使用した現代的音像の曲も含まれている。さらり耳馴染みのよいアルバムだけど、そんな引っ掛かりもあって、深みを感じさせるアルバムに仕上がっている。

特にバンドネオンやアコーディオン、アコースティック&エレクトリックギターの響きが印象的。また耳に残るストリングスはニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団によるもの(4曲参加)で、アルバムに豊かな彩りを添えている。お馴染みの名曲"La Paloma"もグッとくるアレンジ(「シビレました…」とはエルスール原田店主の言)。リリースは2024年9月だけど、個人的には今年を代表する一枚になりそう。



以下、エルスール購入品以外のオススメも。

Durand Jones & The Indications / Flower Moon

6月にアルバム"Flowers"をリリースしたばかりの大好きなグループ。前作"Private Space"(2021年)から4年経ってるけど、その間にDurand JonesやAaron Frazerのソロアルバムがリリースされていたため、あまりブランクを感じさせない。相変わらず素晴らしいヴィンテージソウル。全体的にMarvin Gayeを彷彿とさせる。Aaron Frazerのファルセットがまたいい。今までのアルバムでいちばん好みかも。



Drugdealer ft. Weyes Blood / Real Thing

DrugdealerことMichael Collinsと、Weyes BloodことNatalie Meringのコラボレーション。2人は過去に"Suddenly""The End Of Comedy""Honey"でコラボしており、勝手知ったる間柄。70年代の雰囲気あふれる歌と曲は、これって誰かのカヴァーだっけ?と思わずクレジットを確認してしまうほど。もはや名人芸と言っても過言ではない。



▼今月のSpotifyプレイリスト(紹介した曲以外にも、お気に入りを追加しています。雑多なラジオ感覚プレイリストです)


②今月の読みかけ

気づくと、部屋には読みかけの本ばかり。積読と読了のあいだ。読書・現在進行形。



(今回は読みかけでななく、現在おかわり中の本)

何はともあれ、武田百合子(「富士日記」「犬が星見た」など)が好きだ。自由奔放さと冷徹な観察眼をあわせ持つ稀代の文筆家。どうやったらこんな風に書けるんだろうと、読むたびその天才ぶりに驚嘆するばかり。

先日、美術館帰りに立ち寄った丸善・京都本店で、「富士日記」という文字が目に留まった。「おかわりは急に嫌:私と『富士日記』」がそれで、「著者サイン本」と印刷された紙が本と巻かれたビニールの間に挟んである。サイン本はどうやらこれが最後の1冊みたいだ。ビニールで巻いてあるため中身を確かめることができなかったが、僕自身「富士日記」好きであり、また以前から気になってた古賀及子さんの本ということで、これも何かの縁と購入した。

内容は「『富士日記』のきらめく一節をあじわいながら、そこから枝分かれするように生まれてくる著者自身の日記的時間をつづる」(出版社の内容紹介より)もので、とても楽しく、また感心しながら読み終えた。タイミングよく出版トークイベントが開催される(オンライン配信あり)という情報をゲットし、トークイベント(こちら)も楽しみながらオンラインで視聴した。古賀及子さんと古田徹也さんの掛け合いが絶妙だし、お互いの「富士日記」愛が伝わってきてとても良かった。日々の何でもないことを書き続けることや面白くないことの大事さ、そんな話にグッときた。

イベントに触発され、約2年ぶりに「富士日記」を再読し始めたばかり。前回読了した際は、途中ブランクを挟み数年がかりだった。休止してる間に文庫本の新版が出て、旧版にはない巻末エッセイが各巻に収録されていた。それが読みたくて、また全巻(上中下)新版で買い直したっけ(笑)。これからまた武田百合子や武田泰淳、その他たくさんの魅力的な人々に再会できるのが楽しみだ。

Fuji
古賀及子「おかわりは急に嫌:私と『富士日記』」
武田百合子「富士日記(上)」

③今月の日記

上述のトークイベントを機に、日々の何気ないことを書き留めるべく、久々に日記を書いてみます(昔はこのブログでも日記書いてました)。



・6月某日
朝6時、今日は母親の通院付き添いのため、いつもより早く起きる。近所のかかりつけ医とは別に、3か月に1回、車で片道1時間かかる遠くの病院へ行く日。隣町に住んでいる妹が車を出してくれる。ありがたい。車中で中森明菜の話など。妹は数十年来の中森明菜ファンで、過去ディナーショーに何度も行ってるし、今もファンクラブに入ってる。先日東京ドームシティで開催された中森明菜の写真展へ、深夜バスに乗り弾丸で行ってきたとのこと。あとファンクラブ限定のライヴに落選したが、後日繰り上げ当選のメールが来たらしい。あいにくその弾丸旅行中にメールが来ており、バタバタでちゃんとチェックできず、振込期限後に気づき、痛恨の極みだったとのこと。次の機会に行けるよう、兄も微力ながら祈るよ。

母親の診察は無事終了。また3か月後に診察。薬局で薬をもらうのに1時間ほど待つ必要あり、その間に病院内のドトールで昼ご飯を食べることに。3人ともチーズインミラノサンド・Aセット。飲み物は限定アイスコーヒー・L(母親と僕)、塩キャラメルラテ・L(妹)。追加でバウムクーヘン(妹)ともっちりどら焼き(僕)。何だかんだ話して1時間半ほどドトールにいた。薬局へ戻り、薬を受け取り会計を済ませる。今日は特にどこにも寄らず、午後3時ごろ帰宅。

晩ご飯。ご飯、みそ汁、蒸し鶏、かぼちゃ煮物、きゅうり浅漬け、めかぶ。

・6月某日
TVのニュース。白浜アドベンチャーワールドからパンダ4頭、全頭中国に返還される。一般公開最終日ということで、開園前から1,400人もの列。東京など遠方からも多くの人が来て、最後のお別れを涙ながらに惜しんでいる。みんな黒い服を着ているが、これには理由があり、ガラス越しにパンダを撮影する際、カメラに自分が写り込まないようにするため。巨大なカメラのレンズに写り込み防止の黒いカバーを付けてる人たちも。すごい装備でみんな一生懸命パンダを撮っている。それぞれの場所(界隈)に、それぞれの知恵がある。勉強になります。

晩ご飯。ご飯、蒸し野菜、胡麻ドレッシング、ナス煮浸し、じゃこきゅうり、めかぶ、はらんきょう。

・6月某日
親戚のおじさん(母親の弟)から宅急便で三輪そうめんが届く。母親、お礼の電話をかける。

久しぶりに京都へ。最寄り駅に歩いて向かう途中、ショウリョウバッタ、キアゲハ、モンシロチョウ、シオカラトンボよりもう少し色が濃いトンボを見かける。梅雨が明けて虫の活動が活発になっているのかもしれない。

京都に到着し、美術館「えき」KYOTOで「没後40年 鴨居玲展 見えないものを描く」を見る。会期末が近づき、結構混んでいた。ブラジルのパーカッション奏者を描いた「太鼓」、自画像、教会のシリーズなど印象的。京都はちょっと遠いし行こうか迷ってたけど、来て良かった。印刷の発色も良かったため、普段買わない図録を買ってしまった。
その後、河原町OPAブックオフと、丸善・京都本店へ。欲しかった本があったので、それぞれ2冊、3冊購入。夕方になり遅くならないうちに、いそいそと帰る。午後7時過ぎ帰宅。日が長いから、京都に行ってもまだ明るいうちに帰れるのがいい。

晩ご飯。ご飯、蒸し野菜、胡麻ドレッシング、ナス味噌、キューちゃん漬け、めかぶ。

■編集後記

今月は訃報が続きました。音楽界では長年愛聴してきたスライ・ストーンに、ブライアン・ウィルソン。野球界では長嶋茂雄。亡くなって改めてその偉大さを実感しました。どうか安らかに。



以上、皆さまの音楽生活の参考になれば幸いです。では、また。


Stop Look Listen(2025年5月号)

月刊誌的「Stop Look Listen」の第5回。GW期間中の動ける日は、ほぼ美術館に通ってました。いいものをたくさん見ることができ、充実した休日を過ごすことができました。ということで(?)、「今月のアート」はじめました。よろしくどうぞ!

<目次>

①今月の音楽
②今月の読みかけ
③今月のアート
■編集後記 

①今月の音楽

今月は隙間時間に結構音楽を聴くことができ、色んないい曲に出会えました。



Cola Boyy / Babylon

5月にアルバム"Quit To Play Chess"をリリースしたばかりのCola BoyyことMatthew Urango。残念ながら彼は2024年3月に34歳の若さで亡くなっており、本作が2枚目にしてラストアルバム(になると思われる)。ヒップホップ、R&B、ディスコ、レゲエなど練り込まれた快作。捨て曲なしの年間ベストアルバム候補。



Pachyman / Calor Ahora

こちらも5月にアルバム"Another Place"をリリースしたばかりのPachymanことPachy Garcia。彼はLAを拠点におくプエルトリカン。前作"Switched-On"(2023年)も好きだったけど、本作も素晴らしい。ルーツ・ダブ/レゲエがてんこ盛りで、とにかくダビーな音像が気持ちいい。野外でもクラブでもOK(爆音で聴きたい!)。



Diskoria bersama Laleilmanino, Andien & Bandung Jazz Orchestra / Selamat Ulang Tahun

4月にアルバム"Intonesia"をリリースしたインドネシアのDJデュオ。様々なゲスト(Danilla、Eva Celiaほか)を迎え、ポップかつ聴かせる作品になっている。オススメたくさんある中、Andienの参加が嬉しい夏向きAORをセレクト。



區子琳 Paula Au / I'm not 18 or 22

最近初めて知った香港のSSW、區子琳 Paula Au。キャッチーなメロディが耳に残るポップ・チューン。今月いちばんヘビロテした曲かも。すっかりハマってます。



Surprise Chef / Bully Ball

5月に4thアルバム"Superb"をリリースしたばかりのオーストラリア・メルボルンのシネマティック・ソウル・バンド。ソウル、ヒップホップ、ジャズファンク、アフリカ音楽、サントラ、ライブラリーなど、レコードマニアでもあるメンバー自身の好きな音楽に影響を受けたインスト・アルバム。本作は以前よりも自由なアプローチで制作されたらしく、それが伝わってくるカッコイイ仕上がり。メンバー5人中3人が同じ家(スタジオ兼住居)で暮らしているらしく、ジャケットもそれを表しているとのこと。リリースは信頼のBIG CROWNより。



▼今月のSpotifyプレイリスト(紹介した曲以外にも、お気に入りを追加しています。雑多なラジオ感覚プレイリストです)


②今月の読みかけ

気づくと、部屋には読みかけの本ばかり。積読と読了のあいだ。読書・現在進行形。



画家の書いた文章(主にエッセイ)が好きだ。いい絵を描く画家はものの見方や世界の捉え方がひと味違っていて、文章を読んでも、なるほどと膝を打つことが多い。頭にある考えを自分の言葉にして表現できるから、きっといい絵が描ける(頭にあるイメージを自分の思い通りの色やかたちにして具現化できる)のだろう。

画家だけでなく、近しい人物が書いたエッセイも面白い。洲之内徹の名前は以前から知っていて(「気まぐれ美術館」など)、美術エッセイスト・小説家・画商という肩書はそそるものがあったが、あまり馴染みのない画家についての文章が多くなかなか手を出せずにいた。ある日書店で「洲之内徹ベスト・エッセイ1」を何気なく立ち読みしたら面白くて、これなら読めるかもと購入した。

寡聞にして知らない画家(主に日本の近代画家)についての文章も面白く、心配は杞憂に終わった。例えば、松本竣介、鳥海青児、村山槐多など、実際に絵を見てみたいと思った。1を読み終えたが、「セザンヌの塗り残し」「モダン・ジャズと犬」あたりが特に印象的だった。今は2を読んでいるが、「薬瓶」「穴を掘る」など、戦地での描写が心に残った。読み進めていくのが楽しみだ。

Sunouchi

洲之内徹 著、椹木野衣 編
「洲之内徹ベスト・エッセイ1」「洲之内徹ベスト・エッセイ2」

③今月のアート

美術館に行くと新たな出会いがあり、気分がリフレッシュされる。ここ数年(個人的にはコロナ禍が契機)、美術館に行く機会が増えていたが、今年に入ってますます作品や美術館への興味が強くなってきた。そんなわけで、備忘録的にちょっと書いてみる。

前述のとおり、GWは足繫く美術館に通った。大阪、奈良、京都で開催中の国宝展(どれも激混み!)や、神戸のクレー展と南蛮美術展、京都で開催されたKYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭など、関西各所の気になる展覧会に行くことができた。今回はその中で、最もこじんまりした美術館を取り上げたい。



■中野美術館(公式サイトはこちら

GWのある日の午後、電車の中で「洲之内徹ベスト・エッセイ1」を読みながら、奈良・学園前にある大和文華館(こちら)へ向かっていた。ふと思い立ち、あわせて立ち寄れそうな美術館がないか調べたところ、すぐ近くに行ったことのない美術館があることが分かった。それが中野美術館。しかも洲之内徹のエッセイに出てくる画家の作品がいくつも展示されている様子。こんな偶然もあるんだ!呼ばれてる?と驚きつつ学園前に向かった。

中野美術館は閉館時間が16時と早めで、時間があまりなかったため、先に行くことにした(駅から向かうと、大和文華館の前を通り過ぎることになる)。

Nakano1
中野美術館外観
Nakano2
中野美術館入口

その日は「大正・昭和の個性派画家たち-二科会、春陽会、独立美術を中心に-」「近代の日本画-渓仙・麦僊・華岳・波光-」という2つの展覧会が開かれていた。当館創設者である中野皖司は家業である林業のかたわら、約25年にわたり近代日本の洋画・日本画を収集したとのこと。それが当館のコレクションとなっている。
 
Nakano3
展覧会案内(絵は村山槐多「松の群」)

入口でスリッパに履き替え入館するスタイルで、個人の邸宅か別荘に来ているような感覚になる。受付階が2Fになっていて、まず左手の洋画展示室へ。洲之内徹のエッセイを読んで、実際に見たいと思っていた松本竣介、鳥海青児、村山槐多などを早速見ることができた。

階段を下り、1Fの日本画展示室へ。

Nakano4
日本画展示室

竹内栖鳳、土田麦僊など、じっくり堪能した。

Nakano5
茶室

吉野産赤杉をふんだんに使用した茶室(創設者・中野皖司の家業が林業だけある)を見ていると、余白の美という言葉が浮かんだ。普段なんと多くの物や情報に囲まれて過ごしているか思い起こされ、それって本当に必要?と問われているような気がした。

今回初めて来たけど、美術館も展示内容もすごく良かった。僕のほかに数組来られてたけど、多くの時間はほぼ貸し切り状態。とても贅沢な時間を過ごすことができた。すぐ近くの大和文華館まで来てるのに今までなぜ知らなかったのだろう?と思ったけど、一年中開いてるわけではなく、数か月は閉館しているようだ。建物も良かったし、ラウンジから蛙股池を望む景色も良かった。ぜひまたゆっくり訪れたい。



その後、駅の方へ戻り、大和文華館「没後50年 矢代幸雄と大和文華館―芸術を愛する喜び―」へ。GWということもあり、こちらは結構人が多かった。見どころ多く楽しめたが、特に「婦女遊楽図屏風〔松浦屏風〕」が艶やかで煌びやかで、本当に素晴らしかった。また別の機会にこちらの美術館も紹介できればと思う。

■編集後記

先日、苗を買ってきて畑に植えた夏野菜のうち、キュウリが7本できました。他のもたくさんできたらいいなぁ。採れたて新鮮野菜を食べるのが今から楽しみです。



以上、皆さまの音楽生活の参考になれば幸いです。では、また。


Stop Look Listen(2025年4月号)

月刊誌的「Stop Look Listen」の第4回。4月は年度初めということもあって、何かと慌ただしく、あっという間に過ぎた感じです。ぼちぼち更新してます。よろしくどうぞ!

<目次>

①今月の音楽
②今月の惹句
③今月の読みかけ
■編集後記 

①今月の音楽

前述の通り、慌ただしい日々が続き、今月は音楽を聴く時間があまり取れませんでした。そんな中でも、色んないい曲に出会えました。



The Waterboys / Andy (A Guy Like You)

The Waterboys / Riding Down To Mardi Gras

The Waterboys / Hopper's On Top (Genius)

Mike Scott率いるベテラン・バンド。Dennis Hopperを題材にしたコンセプト・アルバム"Life, Death And Dennis Hopper"を4月にリリースしたばかり。これがとてもいいので、3曲ピックアップ。上からそれぞれ、メロディアスなポップ、Ry CooderとTom Waitsの中間みたいなセンチメンタル・バラード、Bob DylanがRolling Stonesをバックに歌ってるようなグルーヴィー・チューン。Bruce Springsteen、Fiona Apple、Steve Earleなど豪華なゲスト陣。ジャケもカッコよく、年間ベストアルバム候補。



Salif Keita / Tassi

続いても4月にアルバム"So Kono"をリリースしたばかりのマリ出身の御大。本作は2023年にイベントKYOTOPHONIEで来日した際、宿泊したホテルで録音したアコースティック・ギター弾き語りがもとになっている。クレジットを確認したところ、アルバム9曲中5曲をザ・リッツ・カールトン京都で録音している。彼はこれまでアコースティック・アルバムは作らないと決めていたらしいけど、おそらく京都滞在中に心境の変化があったのだろう。

来日公演のうち、金剛能楽堂のライヴには僕も駆け付けた(写真下)。70歳を超えたとは思えないほど声も出ていて、本当に素晴らしい公演だった(ちなみに前座はLucas Santtana。こちらも良かった)。ライヴの思い出と相まって、本作はより心に沁みる。リリースはフランスのNØ FØRMAT!から。

Salifkeita_kyoto
(2023/4/23、京都・金剛能楽堂の座席から撮った写真。本当に間近で見ることができて感激。贅沢な時間だった)



JUU4E / Budsaba

3rdアルバム"IS"の日本盤が3月にリリースされたタイのラッパー(3月には来日公演も行っている)。ゆるく、ファニーで、カッコよく、ポップで、ダンサブル。とにかく一度聴いたらクセになる音。



▼今月のSpotifyプレイリスト(紹介した曲以外にも、お気に入りを追加しています。雑多なラジオ感覚プレイリストです)


②今月の惹句

惹句とはキャッチコピー、宣伝文句のこと。こちらではレコード(主に日本盤7インチ)の味わい深い惹句を取り上げます。



全米No.1ヒット「ハイ・スクールはダンステリア」に続くニュー・シングル。ーーーそっと涙してもかまわない。

Cl_tat1

'80年代の個性派女性シンガー、ナンバー・ワン!シンディ・ローパーが超世界的大ヒット、「ハイ・スクールはダンステリア」に続いて放つニュー・ヒットは、センチな清純派に変身なのです。

Cl_tat2
シンディ・ローパー「タイム・アフター・タイム(過ぎ去りし想い)」
(1984年・日本盤リリース1984年)

Cyndi Lauper / Time After Time


③今月の読みかけ

気づくと、部屋には読みかけの本ばかり。積読と読了のあいだ。読書・現在進行形。



少し前だとアメリカ大統領選の背景として、最近だとローマ教皇死去に伴うコンクラーベについて、など、欧米を中心にキリスト教に関するニュースがたくさん流れてくる。キリスト教徒でない僕にとっては、分かったような分からないようなことも多い。ひとまず、かみ砕いた本から始めて理解しようと考え、この2冊を読んでいる。

例えば旧約聖書や新約聖書。「旧訳」「新訳」と頭の中で勝手に誤変換していて、意味の分からないことになっていた。そっか、「旧約」「新約」の「約」は「契約」の「約」なんだ!と、基本的なところで既に目から鱗状態。精神的支柱である聖書にそもそも「契約」が含まれてるんだから、そりゃ欧米は契約社会になるわな、と今更ながら納得。分かっている人にとっては取るに足りないことかもしれないけど、ぼんやりしていた知識の解像度が上がるのはとても楽しい。

Christ
森本あんり「キリスト教でたどるアメリカ史」
山我哲雄「キリスト教入門」

■編集後記

先日、近所の方から採れたての筍をいただき、春の恵みを堪能しました。それからほどなくして、裏の畑に植える夏野菜の苗を買いに行きました。ナス、キュウリ、トマト、ミニトマト、ピーマン、ゴーヤ、オクラ、ブロッコリー。どれだけ実るかは分かりませんが、去年同様、採れたて野菜を食べるのが今から楽しみです。食べ物で季節を感じることができるのって、生きてる実感がしていいですね。



以上、皆さまの音楽生活の参考になれば幸いです。では、また。


Stop Look Listen(2025年3月号)

月刊誌的「Stop Look Listen」の第3回。花粉症で辛い日々ですが、今月も色々と更新しています。よろしくどうぞ!

<目次>

①今月の音楽
②今月の惹句
③今月の読みかけ
■編集後記 

①今月の音楽

南米~北米(カナダ含む)、そしてアジア。今月もたくさんいい曲に出会えました。



Cuco feat. Jean Carter / My 45

アルバム"Ridin'"のリリースを5月に控えるチカーノ系SSW。南国~レゲエ~ソウル風味と、全体を貫くレイドバック感。このゆるさが魅力的。クリスマス~年末感あるのは、どこかJohn & Yoko"Happy Xmas (War Is Over)"っぽいから?アルバムのプロデューサーはThomas Brenneck(Menahan Street Band、El Michels Affairほか)とのことで、今から楽しみ。



Ainda / No Es Amor

アルバム"Fuimos Los Dos"を3月にリリースしたばかりのアルゼンチン・デュオ。心弾むようなメロディとストリングス・アレンジが印象的。春向きポップン・ソウル。



Fust / Spangled

アルバム"Big Ugly"を3月にリリースしたばかりのノースカロライナ州ダーラム出身のオルタナ・カントリー・バンド。これぞアメリカン・ロックの良心といった音で、かなり好み。



Charley Crockett / Lonesome Drifter

アルバム"Lonesome Drifter"を3月にリリースしたばかりのSSW&ギタリスト。タイトル曲はアメリカーナど真ん中の音で、たまりません。激渋ブルージー。



Men I Trust / All My Candles

カナダ・モントリオールに拠点をおく人気ドリームポップ/サイケバンド。アルバム"Equus Asinus"を3月にリリースしたばかりだけど、今年はアルバムもう一枚リリースするらしい(タイトルは"Equus Caballus")。たゆたうような音像が心地よい。



Yuki Dreams Again / Too Much

続いてもカナダ・モントリオールに拠点をおくプロデューサー/パフォーマー。2月にアルバム"Star People"をリリース。ギターワークなど疾走感ありつつ、ファンキー。ファルセットのサビも印象的。



Thịnh Suy / Thường

最後はベトナム。ホーチミンに拠点をおくSSW。3月にEP"Cú"をリリースしたばかり。穏やかで優しみあるポップ。いつまでも聴いていられる感じの寄り添い具合。



▼今月のSpotifyプレイリスト(紹介した曲以外にも、お気に入りを追加しています。雑多なラジオ感覚プレイリストです)


②今月の惹句

惹句とはキャッチコピー、宣伝文句のこと。こちらではレコード(主に日本盤7インチ)の味わい深い惹句を取り上げます。



全米チャート急上昇シングル!

アメリカでもっともナイーヴなバンド。少し変わっているけどニューヨークでは主席。"TA  LKI  N  GHE  ADS"


Th_place
トーキング・ヘッズ「ナイーヴ・メロディ(ジス・マスト・ビー・ザ・プレイス)」
(1983年・日本盤リリース1984年2月)

Talking Heads / This Must Be The Place (Naive Melody)


③今月の読みかけ

気づくと、部屋には読みかけの本ばかり。積読と読了のあいだ。読書・現在進行形。



電車に乗る時、少しずつ読んでいる。豪華な執筆陣で面白いものが多い。7割がた読んだなかで特に印象的だったのは、唐十郎、出久根達郎、鈴木信太郎、有馬頼寧(何と西荻窪の名付け親!)あたり。あと向田邦子「中野のライオン」はいろんな本で何度も読んでるけど、やっぱり面白い。

大学入学と同時に上京して初めて住んだのが中央線の国立(くにたち)だったから、中央線には思い入れがある。国立駅を降りて南にまっすぐ伸びる大学通りには桜とイチョウの木が交互に植えられていて、季節ごとに景色が変わる並木道になる。入学した年の春は大学通りの桜がとりわけ見事で、前途を祝福してくれているように思えた。

もし人生でいちばん印象的な春の光景は?と尋ねられたら、その春の満開の桜だと答えるだろう。今は東京から離れたところにいる僕にとって、中央線はずっと春のイメージのままだ。

Chuosen_zuihitsu
南陀楼綾繁 編「中央線随筆傑作選」

■編集後記

先日ふきのとうの天ぷらを食べました。去年こちらで書いた通り、今年は忘れずに裏の畑から採ってきて、ほろ苦い春の味覚を堪能しました。近所でも桜が咲き始めている様子ですし、いよいよ本格的な春到来ですね(花粉症さえなければ…)。



以上、皆さまの音楽生活の参考になれば幸いです。では、また。


Stop Look Listen(2025年2月号)

月刊誌的「Stop Look Listen」の第2回。音楽関連以外で、「今月の読みかけ」も始めました。よろしくどうぞ!

<目次>

①今月の音楽
②今月の惹句
③今月の読みかけ
■編集後記 

①今月の音楽

今月もたくさんいい曲に出会えました。



Scott Bradlee's Postmodern Jukebox feat. Stella Katherine Cole / Uptown Girl

ニューヨークのピアニストScott Bradleeが創設した興味深い音楽集団。Billy Joelのヒット曲をヴィンテージ・ジャズ・アレンジでカヴァー。

Scott Bradlee's Postmodern Jukebox feat. Robyn Adele Anderson & Dave Koz / Careless Whisper

こちらはWham!の大ヒット曲カヴァー(西城秀樹や郷ひろみも日本語カヴァーしたほど、当時日本でも売れてた)。どこかクレズマー的なアレンジがクセになる。楽曲との相性、妙にいい。



Everyone Says Hi / Somebody Somewhere

先月セルフタイトルのデビューアルバムをリリースしたばかりのバンド(バンド名の由来はDavid Bowieの曲とのこと)。耳に残るドリーミー・ポップ。



Vulfmon / Dawn

VulfpeckのJack Strattonによるソロ・プロジェクト。溢れるGeorge Harrison感。ちなみにVulfpeckは今年のフジロック2日目のヘッドライナー(山下達郎と同日)。



Emilia Sisco / Love So Divine

昨年末にリリースされたアルバム"Introducing Emilia Sisco"を最近入手。これが素晴らしい。フィンランドのTimmion Records発で、バックを務めるのはCold Diamond & Mink(Bobby Orozaとの共演で有名)とくれば、間違いない出来。ヴィンテージ・ソウル好きの方ぜひ。早くも今年のベストアルバム候補。



Seu Jorge / Sete Prazeres

単独では10年ぶりのアルバム"Baile à la Baiana"の冒頭曲。相変わらずカッコイイ、サンバ・ファンク。ライヴが観たい。



mega cat / Sabotage

最後はBeastie Boysのカヴァー。昨年末に出たEP"Ultramegacat"に収録。バルカン~東欧っぽい旋律がいい。爆音で聴きたい。fromシアトル。



▼今月のSpotifyプレイリスト(紹介した曲以外にも、お気に入りを追加しています。雑多なラジオ感覚プレイリストです)


②今月の惹句

惹句とはキャッチコピー、宣伝文句のこと。こちらではレコード(主に日本盤7インチ)の味わい深い惹句を取り上げます。



「ボクはみんなと友だちになりたいんだ‼」

●ニュー・アイドル登場‼
ウチの妹も、隣りのユカちゃんも
みんな夢中‼
ヒデキもヒロミもなんのその‼
キミもきっとショーンの
トリコになっちゃうぞ‼
(ショーンはデイヴィッド・キャシディの弟です)


IMG_20250226_0002
ショーン・キャシディ「素敵なモーニング・ガール」
(1977年・日本盤リリース1977年5月)

Shaun Cassidy / Morning Girl


Shaun Cassidy / I Wanna Be With You →B面がちょっとソウルフル。


③今月の読みかけ

気づくと、部屋には読みかけの本ばかり。積読と読了のあいだ。読書・現在進行形。



先日、それぞれ別のブックオフで見かけ、購入。トランプ大統領、大谷翔平、フジテレビ・・・。今、彼女が生きていたら、何を語り、何を彫るだろう?

Nancy
ナンシー関「何が何だか」
ナンシー関、リリー・フランキー「小さなスナック」

■編集後記

年初に、今年は月イチ(できれば月2回)で美術館に行く目標を立てました。今のところ2ヶ月で6件と、いいペースで行けてます。今年は注目度の高い展覧会が関西で多く開催されるので(万博開催にあわせた形かと)、今からとても楽しみです。大阪市立美術館が3月にリニューアルオープンしたり、国宝展的なものが京都奈良大阪でほぼ同時開催されたり。どれも大混雑が予想されますが、ひるまず行きたいところです。



以上、皆さまの音楽生活の参考になれば幸いです。では、また。


Stop Look Listen(2025年1月号)

今年は定期的にオススメをご紹介できたらと思い、お試し的に月イチで雑誌っぽくやってみます。タイトルは「Stop Look Listen」。今回はまず手始めに、最近お気に入りの音楽と惹句をアップします。よろしくどうぞ!

<目次>

①今月の音楽
②今月の惹句
■編集後記 

①今月の音楽

気になるのが色々リリースされてます。



Saem Millward / I Don't Wanna Change

ニュージーランドの新人SSW。声良し、曲良しで、最近めちゃくちゃハマってる。ジャズをベースとしつつ、どこかポップでAOR風味も。元々この曲は高校時代、NCEA Level 3 Music(※)の課題として作ったもので、その後仲間と協力して仕上げたようだ。ちなみに名前のSaemは韓国語で泉や噴水の意味(母方が韓国、父方がニュージーランド)。

※NCEA(National Certificate of Educational Achievement)は、ニュージーランドの中高等学校の資格。Level 3 は通常Year 13(高校3年生)で取るべき単位。



Neal Francis / Back It Up

シカゴのSSW。彼はソウル/ニューオリンズR&Bのイメージがあるけど、この曲はディスコティック。3月にリリース予定のアルバム"Return To Zero"からの先行シングル。4月には来日公演もあり(気になる)。



Eddie Chacon ft. John Carroll Kirby / Empire

続いても、アルバムリリースを控えるSSW(3rdソロ作"Lay Low"・1/31リリース)。この曲はファンキーなブラコン・テイスト。相変わらず渋くてカッコイイ。90年代に活躍したソウル/R&Bデュオ、Charles & EddieのEddie Chaconと言えばピンとくる人がいるかも?



Mac Miller / 5 Dollar Pony Rides

2018年に急逝したラッパー、Mac Millerの未発表アルバム"Balloonerism"が公式音源化。この曲はメロウジャズ風味で、エレピの響きが心地よい。共同プロデュースとベースはThundercat。アルバム通して聴きどころ多し。



▼今月のSpotifyプレイリスト(紹介した曲以外にも、お気に入りを追加しています。雑多なラジオ感覚プレイリストです)


②今月の惹句

惹句とはキャッチコピー、宣伝文句のこと。こちらではレコード(主に日本盤7インチ)の味わい深い惹句を取り上げます。以前こちらでやってたのを久々に再開します。コメントなしでシンプルにいきます。



あの日本公演の興奮が甦る!僕達はもうイーグルスから離れることは出来ない!!

Eagles_takeit
イーグルス「テイク・イット・トゥ・ザ・リミット」
(1975年・日本盤リリース1976年4月)

Eagles / Take It To The Limit


■編集後記

日々刻々と流れていくSNSよりも、少しゆったりとした時間軸を持つブログが、今の自分にはしっくりきます。その感覚を表す言葉を月刊誌的ブログのタイトルにしようと考えていたところ、"Stop Look Listen" ― 立ち止まり、しっかり見て、じっくり聴く ― ふとそのフレーズが浮かびました。次から次へと早送りでチェックを進めるよりも、心に染み込んでいく過程や時間を大切にして、想いを巡らせたい。しばし日常の喧騒を離れ、ひと息入れつつ楽しんでいただけたら幸いです。

▼テーマBGM:The Stylistics / Stop, Look, Listen (To Your Heart)




以上、皆さまの音楽生活の参考になれば幸いです。では、また。